【博士の悲哀2】~ポスドク問題とは(地獄への入り口)1~
この時期、博士論文審査を合格し新たにポスドクとしての旅立ちを迎える方も多いと思う。
また、ちまたでは、今だポスドク問題といった言葉がメディアで取り上げられている状況だ。
しかし一般には、そもそもポスドクとは何者かについてよく知られていないと思う。
なので、ここではその説明をしたい。
・ポスドクとは何か?
ポスドクという言葉を聞いたことがあるだろうか。
ポスドクという言葉は端的に言うと以下の通りである。
ポスドクは「ポストドクター」の略で、ドクター、つまり博士課程を修了した後の任期付きの職についている研究員のことを表す。
ウィキペディア大先生にもこう書いてある。
「博士号(ドクター)取得後に任期制の職に就いている研究者や、そのポスト自体を指す語である。」
博士課程の学生が学位取得後に、研究者になるためにポストドクター(つまりポスドク)という研究員のポストに就かなければいけない。
※就かなければいけない、と書くと語弊があるが、極めて優秀な一部の博士を除いて大体の博士はポスドクとしての道を歩む。
ポスドクになるためには、まずは博士課程を修了しないといけない。
そして、そもそも博士課程に進むためには、大学を卒業し、大学院で修士課程を修了しなければならない。おおまかな流れについて以下に簡単にまとめてみた。
大学卒業(4年間)→大学院修士課程へ
大学院修士課程(2年間)→大学院博士課程へ
大学院博士課程(3年間)→ポストドクターへ
・・・
ポストドクター(x年間)→助教授・准教授(正規のポスト)に就職!*\(^o^)/*
博士課程を修了するためには、4+2+3年間の足し算でざっと9年間学生をする必要があることがわかる。
博士を卒業するころには、27歳か28歳の年齢になっているだろう。
もちろん、これは万事スムーズにいけばの話だが。
ポストドクターの期間についてはx年間と記載した。これは、助教・准教授になるためにポストドクターを何年かすればいいというものではないことを意味している。
正規の助教・准教授の職への公募があった場合、それに採用されるまでひたすらポスドクとして研究生活を続けなければいけない。
早ければ2,3年で正規の助教・准教授の職に就くことができるが、5年以上ポスドクでいるなどということは、ザラである。
単純計算すると、早くても32歳くらいのときに正規の職につけるといったとこだろうか。
ここで、研究生活を続けれるなら、ずっとポスドクでいいという風に考える人がいるかもしれない。
完全にナンセンスである。
実は35歳を過ぎてポスドクのままでいると、ポスドクとして採用してくれる大学・研究所の数も一気に減少する。
するとどうなるか?
ポスドクは公務員のように定年まで職に就けることが約束されているわけではない。
各年度ごとに、契約の更新を行う必要がある。(プロ野球選手をイメージするとよい)
それでは、契約が更新できなかったポスドクはどうなるのだろうか?
その答えは、
無職
である。
無職、これは非常に恐ろしいことである。
高校を卒業してから、十数年間、研究者に憧れて学問の世界に入り、ひたすらひたむきに研究活動を続けてきたのに就職先がなくなった途端、いきなり
無職
である。いきなり無職のおっさん(ないしおばさん)になってしまう。
まさしく蒼天の霹靂といわずなんというのか。
これは冗談ではなく、本当の話なのである。
恐ろしいことは、それだけではない。
無職になると、普通は就職活動をするであろう。
しかし、就職活動をしようにもアカデミアの世界以外の就職先がマジでないのである。
民間の企業であれば、大体修士卒くらいまでなら、新卒の扱いで採ってくれる可能性が高い。
公務員も30歳くらいまではなら、こちらも新卒の扱いで採ってくれるであろう。
しかし、ポスドクとして活動している段階ですでに(ほとんどの)30歳以上になっているので、アカデミアの以外の世界に出られることは、まずない。
仮に30歳以上での採用があるとしても、それは新卒採用ではなく、管理職での採用であろう。
いままで研究しかしてこなかったのに、ポスドクに管理職などできるわけがない。
というか、そもそも人を管理する(マネジメント)の経験がないので、そちらのほうで就職活動を頑張ったとしても大体は門前払いになるだろう。
今日の話はここまでとするが、ここまでの話で、お分かりいただけただろうか。
まだまだ、この問題については語りたいことがあるが、ポスドクになるということは、というか、ポスドクになるからには、必ず正規のポストに就かなければならないのである。
正規の助教・准教授のポストにつけない限り、明日はない。
【今日のまとめ】
・ポスドクとは何か
・正規のポストに就けない限り明日はない
・ポスドクになるとアカデミア以外の道はない